高気密高断熱の家はなぜ乾燥する?―「性能のせい」ではない、本当の理由を建築士が解説します―
こんにちは。
姫路で高性能住宅をつくっている YSHOMEの八木信次です。
家づくりのご相談を受けていると、冬になると必ずと言っていいほど、こんなお声をいただきます。
- 「前の家より暖かいのに、なぜか乾燥する」
- 「喉がイガイガするようになった」
- 「加湿器をつけているのに、全然追いつかない」
こうしたお話を聞くと、
「高気密高断熱の家って、やっぱり乾燥するんですよね?」
と不安に思われる方も多いのですが、結論からお伝えします。
👉 高気密高断熱住宅そのものが、乾燥の原因ではありません。
本当の理由は、
空気の性質(絶対湿度)と24時間換気の仕組みにあります。
今回は感覚やイメージではなく、
建築の世界で使う「空気線図」や数値をもとに、
なぜ高性能住宅で乾燥を感じやすいのかを、できるだけ分かりやすく解説していきます。
乾燥の正体は「相対湿度」ではなく「絶対湿度」
まず大切なのが、湿度には2つの考え方があるという点です。
相対湿度(%)
その温度の空気が、
「最大限含める水分量に対して、どれくらい水分を含んでいるか」
絶対湿度(g/㎥)
空気1㎥の中に、
実際にどれだけの水蒸気が含まれているか
私たちが「乾燥している」と感じるのは相対湿度ですが、
原因を理解するには、絶対湿度を見る必要があります。
暖房を入れると乾燥する理由(空気線図の考え方)
冬の室内で、よくある状態を例にしてみます。
- 室温:15℃
- 相対湿度:30%
このときの絶対湿度は、約 3.8g/㎥ です。
ここから暖房を入れて、
室温を 23℃ まで上げたとします。
このとき、加湿をしていなければ
空気中の水分量(=絶対湿度)は、ほとんど変わりません。
するとどうなるか。
23℃で、絶対湿度3.8g/㎥の空気は、
相対湿度が20%台まで下がります。
👉 これが「暖房すると乾燥する」の正体です。
温度だけを上げると、湿度は下がる。
これは高性能住宅に限らず、どんな家でも起こる空気の性質です。
快適な「23℃・50%」にするには、どれくらい水が必要?
一般的に、冬に快適と言われる室内環境は、
- 室温:23℃
- 相対湿度:50%
この状態の絶対湿度は、約 10.3g/㎥ です。
先ほどの
15℃・30%(3.8g/㎥)と比べると、
10.3 − 3.8 = 約6.5g/㎥
つまり、
👉 空気1㎥あたり、6.5gの水分を足さないといけない
という計算になります。
20畳・天井高2.4m(約48㎥)のLDKなら、
6.5g × 48㎥ = 約0.3L
「暖めるだけでは乾燥する」と言われるのは、
これだけの水分が足りていないからなんですね。
高気密高断熱住宅では、24時間換気が止まらない
高気密高断熱住宅では、
計画換気(24時間換気)が必須です。
つまり、
- 冬の乾いた外気が、24時間室内に入ってくる
- 同時に、室内で加えた水分も外へ排出される
冬の外気は、
- 温度が低い
- 絶対湿度が非常に小さい
この空気を暖めるだけでは、
室内は常に「乾燥する方向」へ引っ張られます。
よく言われる
「高性能住宅は乾燥する」というイメージは、
性能が悪いからではなく、換気と空気の性質によるものなんです。

加湿器だけでは追いつかない理由
一般的な家庭用加湿器の能力は、
- 約200〜500mL/h 程度
一方で、
- 24時間換気による排気
- 人の出入り
- 壁や家具の吸放湿
これらを考えると、
加湿器だけで家全体をカバーするのは難しいケースも少なくありません。
特に、
- 寝室だけを強く加湿する
- 窓の近くで集中的に加湿する
といった使い方は、
- 窓やサッシの結露
- 壁体内結露
のリスクを高めることもあります。
実は「暮らしそのもの」が加湿になっている
ここで、ぜひ知っておいてほしいことがあります。
人の暮らし自体が、非常に大きな加湿源だということです。
人からの加湿
呼気や発汗によって、
- 1人あたり:約0.8〜1.2L/日
4人家族なら、
約3〜5L/日もの加湿効果があります。
室内干し
これはとても分かりやすいです。
洗濯物の
干す前の重さ − 乾いた後の重さ = 加湿量
例)
6.0kg → 4.5kg
→ 1.5L分の加湿
入浴後の湿気
- 浴室の扉を少し開ける
- 脱衣室側で空気を循環させる
これも、立派な「家全体の加湿」になります。
高気密高断熱住宅で大切なのは「適正な加湿」
加湿は必要ですが、やりすぎは禁物です。
目安としては、
- 冬:相対湿度40〜50%
(室温20〜23℃)
そして、
👉 窓に結露が出始めたら、その家の湿度の限界サイン
家ごとに、
- 窓の性能
- 断熱仕様
- 換気方式
は違います。
数字に縛られすぎず、家の反応を見ながら調整することが大切です。
まとめ|乾燥は高性能住宅の欠点ではありません
高気密高断熱住宅が乾燥しやすいのは、
- 気密が高いから
- 断熱が良いから
ではありません。
- 冬の外気は、絶対湿度が低い
- 24時間換気で、乾いた空気が入り続ける
- 暖めるだけでは、水分は増えない
この空気の仕組みを理解すれば、
乾燥は「我慢するもの」ではなく、きちんと対処できる現象になります。
YSHOMEでは、
性能だけでなく、暮らし方まで含めた家づくりを大切にしています。
高気密高断熱の家を、
もっと快適に、もっと心地よく使いこなしていきましょう。

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