後悔しない家づくりの新常識~エアコンの容量はどう決める?一級建築士が解説する「空調設計」の基本~

こんにちは。
YSHOME代表・一級建築士の 八木信次 です。

家づくりの打ち合わせで、よくこんな質問を受けます。

「LDKが20畳なんですが、エアコンは20畳用でいいですよね?」

実はこの考え方、後悔につながりやすい家づくりの典型例です。
エアコンの容量は「畳数」ではなく、家の性能と条件から計算して決めるものだからです。

今回は、設計の現場で実際に行っている
“プロの空調設計の考え方” を、できるだけ分かりやすくお伝えします。


空調設計は「設備選び」から始めてはいけない

快適な住まいをつくるための空調設計は、次の3ステップで考えます。

① 空調負荷計算

その家が

  • 冬にどれだけ熱を失うのか
  • 夏にどれだけ熱が入ってくるのか

必要なエネルギー量(空調負荷)を数値で把握します。

② 必要なエアコン容量の算出

計算した負荷をもとに、
「この家には、何kWの冷暖房能力が必要か」を決めます。

③ エアコンの配置計画

どこに、何台、どう設置すれば

  • 温度ムラが出にくいか
  • 効率よく家全体を空調できるか

を検討します。

❌ よくある失敗は
「間取りが決まってから、畳数でエアコンを選ぶ」こと。

⭕ 正解は
間取りを考える前から“空調負荷”を把握しておくことです。


空調設計の本質は「エネルギーの収支」

空調設計の考え方は、実はとてもシンプルです。

外から入ってくる熱量 = エアコンで補う(または取り除く)熱量

このバランスを取るのが空調設計です。

冬の場合

例えば、

  • 外気:5℃・湿度50%
  • 室内:22℃・湿度40%

この差を埋めるために、どれだけの暖房エネルギーが必要かを計算します。

計算に影響する主な要素

【外部要因】

  • 屋根・外壁・窓・基礎(断熱・気密性能)
  • 換気による外気の流入
  • 太陽の日射熱

【室内要因】

  • 家族の人数(人体発熱)
  • 家電・照明の発熱
  • 部屋干しなどによる湿気

冬は日射や家電の熱が暖房を助けてくれますが、
夏はそれらすべてが冷房負荷になります。

つまり、夏の空調設計の方が、実はシビアなのです。


空調設計は「気象データ」から始まる

最初に確認するのは、建設地の気象条件です。
気象庁のデータをもとに、地域特性を読み解きます。

ここで重要なのが考え方。

夏は「ピーク」ではなく「平均」で考える

最高気温・最高湿度だけで設計すると、

  • エアコンが過剰
  • 冷えすぎ
  • 結露リスクが上がる

といった問題が起こります。

そのため夏は
日中の平均的な温度・湿度を基準に設計するのが一般的です。


換気・日射・空気線図まで考えるのが本当の空調設計

現代の高性能住宅では、さらに踏み込んだ検討が欠かせません。

■ 換気計画

第一種換気(全熱交換換気)を採用している場合、
熱交換効率を空調負荷計算に反映します。

■ 日射遮蔽

  • ガラス性能だけでなく
  • 外付けブラインド・シェード・庇

「どこで日射を止めるか」が冷房負荷を大きく左右します。

■ 空気線図(専門的な話)

温度と湿度の変化を
空気線図(比エンタルピー)で読み解くことで、
必要な冷暖房エネルギーを正確に算出します。


まとめ|空調設計は「断熱性能」への投資判断につながる

ここまで丁寧に計算して、
はじめて 「その家に本当に合ったエアコン容量」 が見えてきます。

すると、多くの方がこう気づきます。

「断熱をしっかりして、
エアコンを小さくした方が、
トータルコストが下がるのでは?」

その通りです。

空調設計は
断熱・気密・窓性能への投資判断と直結しています。

だからこそ、
家づくりの初期段階から
空調まで含めて設計できる建築士に相談することが大切です。

今回は
「エアコン容量をどう決めるか」という
空調設計の基本についてお話しました。

また次回、家づくりの本質的なお話をしていきますね。


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